雨の中 +α




「そういえばさっき透夜が、僕のせいで誤解されたって言ってたけどどういう意味ですか?」


食堂を出て、午後の講義をすべてサボって僕たちは先輩の家にいる。勿論、服なんて着てるはずもなくて……。


「先輩?」
「あー……えーと、その、だな。なんというか……つまり、一樹と透夜がデキてると勘違いしてしまって」
「はい?デキてるってあの、なにがですか?」


――あー、この天然な所もかわいー!


「付き合ってるって事だよ」
「…ええぇぇっ、ありえないですよ!!」
「ほんとにな……いや、俺も意外と健気でねぇ。でも、あの歓迎会の時の一樹と透夜の様子を見てれば誰だって怪しいと踏むさ」
「え?あの時、僕なんかしました?」


先輩は2人と言っているのに、「僕らなんかしました?」と言わなかったのは、酒に酔い潰れてきっと僕がなにかやらかしたんだと自覚があるからだ。
案の定、先輩は明後日の方を向いてもごもごと口篭った。


「せーんぱーい、教えてくださいよ」
「キスしようとしてたぞ」
「………誰が?」
「一樹が」
「……つかぬ事をお聞きしますが、誰に…ですか?」
「透夜に決まってるだろ。話の脈絡を読めよ」
「……せ、せせせ先輩っ、どーしよう、鳥肌が…!!」
「お前も大概シツレーな性格をしてるな」
「だって、透夜ですよ、透夜!考えただけで吐きそうです」
「ンなら口直ししてやるよ」
「んぅ……ふ、ぁっ…」
「ほら、もう大丈夫だろ」
「はい……って、キス"しようとしていた"んじゃなかったんですか?って事は未遂ですよね?」
「まぁ、そういう事だな」
「じゃ、口直しする必要なんて…」
「俺がしたかったんだからいいだろ、別に」
「べ、別にいいですけどっ」
「よし、一樹、もうワンラウンドと行くか」
「え――!?もう疲れました……」
「なに言ってるんだ、ほら俺より若いだろ」
「年齢の問題じゃ…っ、ちょ、ん…せんぱ…」
「雅也だろ」
「ぁん…まさやさ、ン…」






こうして僕らの季節は流れて行く。


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